ESC

二度と伝えることはできないけれど。

今までの人生の中で、ああすれば良かった、こうすれば良かったということがあるにせよ、
それらはすぐ忘れ去られる程度のもので、「後悔」と呼べるほどのものではなかった。
後悔している、と覚えているような出来事など今まで何もなかった。


先日、あたしは、自分の人生の中で、大きな決断をした。
その決断は誰が何と言おうとも、自分では間違ってないと確信しているし、
その決断をしたことに、決して後悔はしていない。


だけどその裏で、ある人を傷つけた。
そのことを、今、ものすごく後悔している。


「傷つけたことを」、ではなく、「傷つけるような結果をまねく行為をしたことを」、と
言った方が正確かもしれない。
あたしの身勝手な行為の結果、その人を傷つけた。
あたしがあんなことをしなけれは、その人を傷つけることもなかったし、こんなことにもならなかったのだろうと思う。


それだけが、どうしても気にかかっていて頭から離れない。
こうするしかなかったのだけど、150%、いや、200%以上あたしが悪い。
むこうには非など何もないのだ。
原因はすべてあたしにあるのだから、あたしが後悔することこそ、自業自得。
あやまってもあやまりきれないが、それでも、どうしてもその人のことを心配してしまう自分がいる。


そんな心配こそ、大きなお世話だろうし、迷惑だろうと思う。
あたしは、もうどうすることもできなくて、何かしたところで、ますます傷つけるだけだろう。
本当に何もしてはいけない、何もしてあげられない、そのことが余計ツライ。


もう二度と元に戻れないことがわかっているから、「あんなこと、しなければ良かった」と後悔しているのである。


ふいに時間が空いてしまうと、つい、そのことを考えていて、仕事やそれ以外のことまでおざなりになってしまってきているのが自分でもわかる。
顕著でなくとも、自分では日常生活に影響を出してしまっているように感じる。
その状況を打破できず、繰り返すのは後悔だけ。
その人を傷つけたことで、自分もとても傷ついたんだと思う。
でも、あたしが痛がっている以上に、その人はもっと痛いハズなのだ。


自分の下した決断は、絶対に間違っていない。
けれども、今はまだ、その人の姿を見るたびに、どうしたらいいのかわからなくなるのも事実なのだ。


願わくば、その人が、いつか幸せになってくれますように。
あたしが唯一できるのは、そう祈るばかり。


そして、しばらくは忘れてはいけないような気がする。
その人があたしにしてくれたことも、あたしがその人を傷つけてしまったことも。